付3.1 無線LAN規格「IEEE802.11」

無線LAN規格「IEEE802.11」※の各方式、特徴について解説します。

※アイ・トリプルイー・ハチマルニ・テン・イチイチと読みます。

➀IEEE802.11bとIEEE802.11g

IEEE802.11b(以下11bという)とIEEE801.11g(以下11gという)は2.4GHz帯を使用する無線LAN規格です。

11bは2002年頃から使用されている規格で最大通信速度は11Mbpsと高速ではありませんが、ゲーム機器、パソコン、プリンターなど利用できる機器が最も多いのが特徴です。

11gは11bと互換性を持たせながら高速化した規格で最大通信速度54Mbpsと11gより高速なのが特徴です。現在発売されている無線LAN機器は11b/11gに対応している機器が主流です。

11bや11gが用いている2.4GHz帯は1チャンネルあたり22MHzの帯域幅があり、11bでは14チャンネル、11gでは13チャンネルが割り当てられています。

ただし各チャンネル5MHzずつしか離れていないため、チャンネルが重なり合い干渉を行うため、干渉を起こさずに利用できるチャンネルは「1ch/6ch/11ch」、「2ch/7ch/12ch」、「3ch/8ch/13ch」のように実質3チャンネル分しかありません。

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➁IEEE802.11a

IEEE802.11a(以下11aという)は5GHz帯を利用する無線LAN規格で最大通信速度は11gと同じ54Mbpsです。

1チャンネルあたり20MHzの帯域幅があり、合計19チャンネルの割り当てがあります。

2.4GHz帯と異なり、それぞれのチャンネルが重ならない仕様のため、利用できるチャンネルが2.4GHzに比べて多いのが特徴です。

なお11aは当初4チャンネルしか使用できませんでしたが、利用できるチャンネル数が2005年に4チャンネル分、2007年に11チャンネル分追加されました。

当初からのチャンネル、追加されたチャンネルを区別するために、使用するチャンネル帯によってW52、W53、W56という区分があります。

5GHz帯の周波数は、省令により屋外での仕様が禁止されていますがW56のチャンネル帯のみ屋外での使用が可能です。

またW53とW56のチャンネル帯を利用する無線LAN機器にはDFSとTPC機能が実装されています。

◇DFS(Dynamic Frequecy Selection)

気象レーダの干渉波を検出した場合にチャンネルを変更する機能

◇TPC(Transmit Power Control)

干渉を回避するため、無線LAN出力を低減させる機能

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➂IEEE802.11n

IEEE802.11n(以下11nという)は、2.4GHz帯と5GHz帯の両方の周波数帯を利用する規格です。

11nでは以下の技術を組み合わせることによって最大通信速度600MHzという高速化を実現しています。

 ・隣接するチャンネルを束ねて通信を行う「チャンネルボンディング」(付図3-4参照)

 ・複数のアンテナで送受信を行う「MIMO(マイモ)技術」(付図3-6参照)

 ・送受信データを多数連結することで大量のデータを送信する「フレームアグリゲーション」

このうちチャンネルボンディングでは隣接するチャンエルを束ねて帯域幅を11aの倍となる40MHzとすることで高速化を図っています。

ただし電波の干渉が起こりやすい2.4GHz帯で広い帯域を利用することは、より干渉を起こす可能性があるため、11nで40MHzを使用する場合は5GHz帯の利用を推奨します。

 ④IEEE802.11ac

IEEE802.11ac(以下11acという)は2014年1月に正式認証された次世代の無線LAN規格です。11nでも使用されている技術を拡張することで大幅な高速化を図っています。

(11acで用いられている主な技術)

 ・チャンネルボンディングの拡大

 ・変調方式の拡大

 ・MIMO技術の拡張

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◇チャンネルボンディングの拡大

11acでは1チャンネルの帯域幅は最大20MHz、11nでは最大40MHzまで使用できますが、11acでは80MHz~最大160MHzまで使用することが出来ます。

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◇変調信号の多値化

11nでは64QAMという変調方式を使っているため一度に扱える情報量は6ビットでしたが、11acでは256QAMという変調方式を用いており、一度に扱える情報量は8ビットとなります。

1つの信号に含まれる情報量が多くなることで、転送効率が向上しています。

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◇MIMO(マイモ)技術の拡張

複数アンテナで多重して送受信を行うのがMIMO技術です。電波を送受信する際の多重数は11nでは最大4多重でしたが、11acでは最大8多重が可能です。

多重数を増やすことにより、一度により多くのデータを送受信することができます。

また複数の機器に電波を送ることができる「DL MU-MIMO(Down Link Multi User MIMO)」技術を採用することで、同一時刻に同一チャンネルでデータを送り届けることが可能になります。

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付3.2 電力線を使ったLAN

PLC(Power Line Communication)は建物内の電気配線(電力線)を通信回線として利用する方式です。HD-PLC方式によるLANは「コンセントLAN」と呼ばれ、2箇所以上のコンセントにPLCモデムの電源プラグを差し込むと、コンセント間の電気配線がLAN回線のように機能します。

通信速度は電力線の状態、家電製品の影響などで変化します。

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付3.3 テレビ用同軸ケーブルを使ったLAN

TLC(TV Line Communication)はテレビ用の同軸ケーブルを通信回線として利用する方式です。2箇所以上のテレビ端子にTLCモデムを設置することで、テレビ用宅内配線がLAN回線のように機能します。新たなLANケーブルを配線すること無く、既存の同軸ケーブルが利用できるため、低コストでの導入が可能です。

回線速度は約65Mbpsです。

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地上・BS放送受信ノウハウ編

地上放送やBS放送を良好に受信するためのポイントを中心に解説しています。

 

第1章 受信機入力レベルと信号品質

第2章 UHFアンテナと受信システム機器

第3章 デジタル放送のトラブル事例と対処方法(工事中)

※2010年度発刊のデジタル放送技術 ~地上・BS放送受信ノウハウ編~のPDF版ダウンロードはこちら

地上デジタル放送の受信ノウハウ (18MB)

BSデジタル放送の受信ノウハウ (2MB)

地上デジタル放送の信号測定ノウハウ (6MB)

 

第1章 受信機入力レベルと信号品質

デジタル放送では、受信レベルが高いだけでは、良好受信が出来ない場合があります

また余裕を持って受信している映像と受信限界ギリギリで受信している映像は同じため、画質では判断出来ません。

安定受信するためには、画質確認、受信レベル測定にあわせて、CN比(MER)、BERなどの信号品質の確認が必要です。

BERは受信可否の判断、CN比(MER)は信号品質の管理に適しているため、それぞれ補完しながら使用します。

アンテナ設置・調整の際には、受信レベルのほかに信号品質としてCN比(MER)、BERを必ず測定してください。

 ◇受信機に必要な入力レベル

地上デジタル放送の受信機入力レベルは、電波産業会(ARIB STD B21)において、34~89dBμVと規定されています。

しかしデジタル放送では、受信限界を超えたときに急激に画質が劣化することから、電波の変動などの余裕を見込んで、望ましい受信機入力レベルは46~89dBとしています。

図:望ましい受信機入力レベル

受信レベル

なお、デジタル受信機には「アンテナレベル」や「受信レベル」を表示する機能がありますが、表示される数値はCN比の換算値を表しており、電波の強さ(受信レベル)ではありません。

またCN比を求める換算値はメーカーや機種により異なるため、アンテナ設置時の参考値としてください。

◇望ましいCN比(MER)とBER

デジタル放送を安定受信するためには、受信レベルに加えて、信号品質が重要となります。

信号品質表す数値としてCN比(MER)とBERがあります。

CN比(MER)は信号品質の余裕度を表す数値です。安定的に受信するために25dB以上の数値が確保出来るようにアンテナ調整を行います。

25dB未満でも受信することは出来ますが、安定受信の余裕度は少ない状態です。

BERはデータの誤りの割合を表す数値で常にゼロ0が望ましい値です。チェッカー(測定器)でE-4、E-3などの数値が表示がされた場合は、受信は出来ていますが、受信限界ギリギリの状態です。

CN比(MER)は安定受信の余裕度、BERは受信可否を判断するのに用います。

図:望ましいCN比とBER

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◇信号品質① CN比

  CN比とは、Carrier(キャリア:信号)とNoise(ノイズ:雑音)の比で、受信した信号の品質を表した数値(単位:dB)

信号品質が高いほどCN比は高い数値を示します。また同じ端子電圧(受信レベル)でもノイズレベルが高いとCN比は小さい値となります。

図:CN比とは?

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◇信号品質② MER(変調誤差比)

MER(エムイーアール)はデジタル信号の変調誤差比の意味です。

伝送途中に加わった雑音等によりコンスタレーション上(下図)の理想点からどの程度ずれているか表した数値です(単位:dB)。地上デジタル波では64ポイントで評価しています。

図:MERの概念

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◇信号品質③ CN比とMERの関係

 CN比:20~30dBの範囲ではCN比とMERの値は高い相関があります。  測定器で受信レベル以外に信号品質を確認する場合、CN比かMERのいづれかで判断できます。

なお、現在市販されているデジタル測定器、チェッカーのCN比の値は、MERを測定し、CN比へ換算し表示する機種がほとんどです。

図:CN比とMERの相関性

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◇信号品質④ BER(ビット誤り率)

 BER(ビーイーアールもしくはバーという)とは、ビット誤り率といい、“0”と“1”で送られたデジタル信号がどの程度誤って受信しているのかを表す数値です。
地上デジタル放送は、一定以下の誤りは訂正する機能があるため、画面上には症状は現れませんが、それを過ぎると訂正がきかなくなり急激に劣化します。
このため、BERを測定すると現在の受信品質が判断できます。

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◇信号品質⑤ BERとMERの関係

 BERは、一定以上の信号劣化があると急激に変化するため、受信可否の判定に適しています。

 MER(またはCN比)は、劣化状態が広範囲に観測できるため、受信出来なくなるまでの余裕度を把握することができます。

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