第1章 受信機入力レベルと信号品質

デジタル放送では、受信レベルが高いだけでは、良好受信が出来ない場合があります

また余裕を持って受信している映像と受信限界ギリギリで受信している映像は同じため、画質では判断出来ません。

安定受信するためには、画質確認、受信レベル測定にあわせて、CN比(MER)、BERなどの信号品質の確認が必要です。

BERは受信可否の判断、CN比(MER)は信号品質の管理に適しているため、それぞれ補完しながら使用します。

アンテナ設置・調整の際には、受信レベルのほかに信号品質としてCN比(MER)、BERを必ず測定してください。

 ◇受信機に必要な入力レベル

地上デジタル放送の受信機入力レベルは、電波産業会(ARIB STD B21)において、34~89dBμVと規定されています。

しかしデジタル放送では、受信限界を超えたときに急激に画質が劣化することから、電波の変動などの余裕を見込んで、望ましい受信機入力レベルは46~89dBとしています。

図:望ましい受信機入力レベル

受信レベル

なお、デジタル受信機には「アンテナレベル」や「受信レベル」を表示する機能がありますが、表示される数値はCN比の換算値を表しており、電波の強さ(受信レベル)ではありません。

またCN比を求める換算値はメーカーや機種により異なるため、アンテナ設置時の参考値としてください。

◇望ましいCN比(MER)とBER

デジタル放送を安定受信するためには、受信レベルに加えて、信号品質が重要となります。

信号品質表す数値としてCN比(MER)とBERがあります。

CN比(MER)は信号品質の余裕度を表す数値です。安定的に受信するために25dB以上の数値が確保出来るようにアンテナ調整を行います。

25dB未満でも受信することは出来ますが、安定受信の余裕度は少ない状態です。

BERはデータの誤りの割合を表す数値で常にゼロ0が望ましい値です。チェッカー(測定器)でE-4、E-3などの数値が表示がされた場合は、受信は出来ていますが、受信限界ギリギリの状態です。

CN比(MER)は安定受信の余裕度、BERは受信可否を判断するのに用います。

図:望ましいCN比とBER

cnber

◇信号品質① CN比

  CN比とは、Carrier(キャリア:信号)とNoise(ノイズ:雑音)の比で、受信した信号の品質を表した数値(単位:dB)

信号品質が高いほどCN比は高い数値を示します。また同じ端子電圧(受信レベル)でもノイズレベルが高いとCN比は小さい値となります。

図:CN比とは?

cn

◇信号品質② MER(変調誤差比)

MER(エムイーアール)はデジタル信号の変調誤差比の意味です。

伝送途中に加わった雑音等によりコンスタレーション上(下図)の理想点からどの程度ずれているか表した数値です(単位:dB)。地上デジタル波では64ポイントで評価しています。

図:MERの概念

cons

◇信号品質③ CN比とMERの関係

 CN比:20~30dBの範囲ではCN比とMERの値は高い相関があります。  測定器で受信レベル以外に信号品質を確認する場合、CN比かMERのいづれかで判断できます。

なお、現在市販されているデジタル測定器、チェッカーのCN比の値は、MERを測定し、CN比へ換算し表示する機種がほとんどです。

図:CN比とMERの相関性

cmmer

◇信号品質④ BER(ビット誤り率)

 BER(ビーイーアールもしくはバーという)とは、ビット誤り率といい、“0”と“1”で送られたデジタル信号がどの程度誤って受信しているのかを表す数値です。
地上デジタル放送は、一定以下の誤りは訂正する機能があるため、画面上には症状は現れませんが、それを過ぎると訂正がきかなくなり急激に劣化します。
このため、BERを測定すると現在の受信品質が判断できます。

ber

◇信号品質⑤ BERとMERの関係

 BERは、一定以上の信号劣化があると急激に変化するため、受信可否の判定に適しています。

 MER(またはCN比)は、劣化状態が広範囲に観測できるため、受信出来なくなるまでの余裕度を把握することができます。

bermer