第2章では、UHFアンテナの性能や設置ノウハウ、ブースターなどの受信システム機器の基本を解説します。
2.1 UHFアンテナ
2.2 受信システム機器
地上放送を安定受信するためのUHFアンテナの基本を解説します。
地上放送で使用されるUHFアンテナは受信する帯域によって、利得が異なります。
受信するチャンネルに合ったアンテナを使用しないと、電波の強い地域であっても受信不良となる恐れがあるため、地域のチャンネルにあったUHFアンテナを選びます。
UHFアンテナには素子(横に並んでいる棒状の金属)の数によって、アンテナ利得(電波を受信する力)が異なります。
素子数が多くなるほどアンテナ利得が高くなりますが、アンテナの指向性は狭くなります。
地域の電波状況に合った受信アンテナを選びます。
受信アンテナには、最大感度方向があります。安定した放送受信をするためには 送信所に正しくアンテナを向けます。
なお、最大感度方向の利得から3dB低下する2つの方向をはさむ角度を「半値幅」といい、半値幅が小さいほど指向性が鋭くなります。
指向性が鋭いアンテナを正しい方向に向けることで、マルチパス(反射波)や妨害波を弱められ、障害を取り除き信号劣化を防ぐことができる場合があります。
電波の周波数や送信点からの距離によって受信電界強度が変化します。
そのため、受信チャンネルにレベル差がある場合はアンテナ(高さや位置)の調整が必要です。
アンテナは高くすれば良くなる場合だけではないので注意が必要です。
<ポイント>
ハイトパターンピッチ(レベル変動の周期)は、周波数が高いほど、 また、送信アンテナ高が高いほど短くなり、送信点・受信点間距離が遠いほど長くなります。
ブースターは入力された信号を増幅する機器で、通常は受信アンテナの直下に設置し、受信された信号品質を保ちながら信号量(レベル)を上げて運用します。
ブースターの利得(増幅量)は、分配器やケーブルなど受信システム内での減衰量を考慮して選定します。
なお、ブースタの定格出力を大幅に超えて使用すると、ブロックノイズや受信不良になるため注意が必要です。
またブースターの取付け方法に不備があると、「ブースター発振」による受信不良が起こる場合があります。
ブースター発振はブースターで増幅されたテレビ信号の一部が入力側に戻り,更に増幅され強力な妨害電波を発生する現象です。
F型接線タイプの受信システム機器の普及により発生頻度は減りましたが、ブースター発振が起きた場合は、妨害電波が受信アンテナなどから放射されるため、広範囲(周辺100m~1km程度)に受信障害が発生します。
ブースター発振を防止するには
・アンテナとブースターの間隔は十分に空ける。
・ケーブルはアンテナマストに束ねず、スタンドオフ(インシュレータ)を使用する。
・ケーブルは直付けせず、F型接栓を使用する。
・F型接栓タイプのブースターを使用する。
同軸ケーブルには、太さや編組による減衰量の違いのほか、シールド数の違いなどがあります。
電波を良好な状態で伝送するためには、低損失でBS-IF帯までの性能が安定しているS-4C-FB以上の同軸ケーブルを使用する必要があります。
集合住宅などの共同受信システムにはS-5C-FBやS-7C-FB,低損失のHFLタイプの同軸ケーブルを使用します。
また、 3Cなどの細いケーブルや, 5C-2VなどのUHF帯の性能保証がないケーブルを使用している場合,経年劣化により減衰量が増加することがあります。
S-5C-FBなどのUHF帯の減衰が少ないケーブルを設置して改善を図ります。
ケーブルを極端に折り曲げたり,電源配線用のステップルで固定したりすると,被覆が傷つき腐食しやすくなるほか,断線やショートの原因となります。